ソマティック・エクスペリエンシングへの誘い
ソマティックエクスペリエンシングについて優しく書いていきます。ソマティックエクスペリエンシング®️(SE™️)とは、ソマティック(身体)とつながりトラウマを癒す療法です。今回はトラウマの癒しの前提となる自分とコミュニケーションをとることについて述べてみます。
目次
2つのコミュニケーション
「コミュニケーション」と聞くと何を思い浮かべますか?
コミュニケーション力(コミュ力)が高い、コミュニケーションが上手にできない(コミュ障)などと言われているように、人と人との間の会話をイメージすることが多いと思われます。言語的なものだけではなく、非言語的なコミュニケーションもありますよね。赤ちゃんや動物とのコミュニケーションは、抱っこしたり、撫でたりと実際に体で触れ合います。これが一般的なコミュニケーションです。
コミュニケーションには、実はもう一つあります。それは、他者や動物とではなく、自分自身とコミュニケーションすることです。
カラと中身
人の心にはカラと中身があります。
①中身とは、心の内面です。感情や欲求、認知や思考、感覚など、私たちが経験していることは全て中身にあります。また、この図の黒い部分は無意識の領域です。無意識領域には私たちが意識していないことが眠っています。そこにはすでに忘れてしまっている過去の記憶やその記憶にまつわる感情や感覚、思考、欲求などがあります。普段は忘れている記憶でも何かの拍子に思い出すことがありますよね。
②カラとは、外に見せる自分です。赤ちゃんにはカラはありません。感じていることや体験していることをそのまま表面に出しています。本能のまま、怒ったり、泣いたり、笑ったり、不機嫌になったり、おしっこしたり、うんちしたり、満足したりします。ありのままの自分を外の世界に見せています。しかし、年齢を重ねるごとに、全てを外に見せなくなります。カラができるからです。
カラは環境の中でうまくやっていくために身につけるものです。子供の頃は家庭の中で受け入れられるため、大人になると社会で受け入れられるためにカラを作ります。カラは社会性とも呼ばれます。
中身とのコミュニケーション
自分自身とのコミュニケーションとは、中身とのコミュニケーションです。
子供の頃は中身が自然と外に出ていますが、多くの人は大人になると中身を無視したり、抑圧したり、表現しなくなります。
人前で「いい人」のカラで生きていると中身が苦しくなります。苦しい中身は私たちにその苦しみを知らせるためのSOSサインを送ってきます。
実は、悩みや苦しみ、症状や病気とは中身が送ってくるSOSサインです。
SOSサインに気づく
苦しい中身が送ってくるSOSサインは、心、体、行動に表れます。
心・・・悲しみ、怒り、虚しさ、寂しさ、劣等感、自己否定、死にたい気持ち など
体・・・不眠、高血圧、偏頭痛、肩や腰の痛み、便秘や下痢を繰り返す、自律神経の乱れ、病気になりやすい など
行動・・・お酒がやめられない、カフェインをたくさんとる、買い物依存、自傷行為、人間関係に依存する など
心・体・行動にこれらのことが表れると、私たちは打ち消そうとします。打ち消そうとしてもこれらのSOSサインは繰り返し表れます。
中身とコミュニケーションするとは、SOSサインに気づき、SOSサインに向き合うことです。
中身とのコミュニケーションとソマティック・エクスペリエンシング
ソマティック・エクスペリエンシングとは、身体の感覚を体験するという方法です。
心・体・行動に表れるSOSサインに気づき、それらのサインを体験していきます。
SOSサインは中身が送ってくるサインです。最初は意味が分かりませんが、サインを体験していくと、かすかな感覚、感情、イメージ、記憶、思い、動きが出てきます。それらを少しずつ、ゆっくり、自分の限界を超えない範囲で体験していきます。
中身には過剰なエネルギーが溜まっています。そのエネルギーを爆発させるのではなく、少しずつ出していきます。そうすることで苦しい中身が解放されます。
中身とコミュニケーションをとることを少しずつ学んでいくと、中身に詰まっているトラウマのエネルギーも少しずつ解放されていきます。