ソマテック・エクスペリエンシングで緊張をほぐす
目次
ソマテック・エクスペリエンシングとは
ソマティック・エクスペリエンシング®️(以下、SE™️)とは、身体に働きかけてトラウマを解放する方法です。以前はソマテック・エクスペリエンスと言われていましたが、ソマティック・エクスペリエンシングが正しい言葉です。
SE™️は、身体の感覚を通して、脳や自律神経系を調整します。トラウマがある状態というのは、脳の原始的な部位の一つの扁桃体が活性化している状態です。扁桃体は恐怖に反応する脳の部位です。扁桃体が活性化しているためにたとえ安全な状況でも危険と捉えます。危険と捉えると身体は防衛反応を起こします。
身体の防衛反応により、自律神経系の交感神経が活性化され、闘争逃走反応が生じます。または、副交感神経系の一部の背側迷走神経系が高いトーンで活性化して、凍りつきや温存反応を生じます。
SE™️では、扁桃体が活性化している状態を収めようとします。その方法の一つは、未完了の闘争逃走反応を完了させるために戦ったり、逃げたりすることを安全なセラピー空間の中で行います。戦えた、逃げられたという体験を「今、ここ」で行うことで闘争逃走反応のためのエネルギーが解放され、リラックスした状態になります。
リラックスした状態とは、腹側迷走神経系が働いており、背側迷走神経系も低いトーンで働いているため、人と交流したり、一人で落ち着いたりできます。
自律神経系が交感神経系と高いトーンの背側迷走神経系から、腹側迷走神経系と低いトーンの背側迷走神経系にシフトすることで、脳の中の扁桃体が落ち着きます。扁桃体が落ち着くと恐怖がなくなるのでトラウマから解放されたことになります。
緊張してしまうとき
人が緊張している時は、トラウマがある時と同じようなことが脳内と自律神経系で起きています。
扁桃体が危険信号を発してします。人が緊張するときは、今現在危険が迫っている場合があります。今は危険ではないけれど扁桃体が危険だと反応している時は、トラウマ反応だと考えられます。例えば、人前でこれから話をしようとするときに緊張する場合は、過去において人前で話をしたときに嫌なことがあったということです。
扁桃体が危険だと反応しているので、自律神経系は交感神経系の闘争逃走反応、あるいは、背側迷走神経系が高いトーンで活性化しているので、凍りつきや温存反応を起こします。
心臓がドキドキしたり、体が熱くなったり、汗をかいたり、肩や足に力が入ります。手が震えて、頭の中が真っ白になり、手足が固まり動けなくなり、口が固まり言葉が話せなくなります。緊張が高くなると意識が遠くなったり、気絶してしまうこともあります。
緊張が長期間続くときには、血圧が上がり、胃の調子が悪くなり、便秘や下痢になり、免疫が弱くなるので風邪や病気にかかりやすくなり、めまいや頭痛を繰り返すようになります。
緊張に耐えられなくなるのでアルコールや喫煙に依存したり、過食をしたりします。賭け事や自傷行為、危険な運転や喧嘩、ドラッグや危険な性的行為をしたりもします。
緊張をほぐすには
緊張をほぐすには自律神経系をシフトさせる必要があります。交感神経系と高いトーンの背側迷走神経系が優位な状態から、腹側迷走神経系と低いトーンの背側迷走神経系が優位な状態に変化すると、扁桃体が落ち着きます。
扁桃体の活性化が落ち着くと、今いる環境は危険ではないことがわかるので緊張がほぐれます。
ポイントは腹側迷走神経系と低いトーン背側迷走神経系です。
腹側迷走神経系は社会交流システムとも呼ばれます。人とつながったり、心を開いてコミュニケーションしたり、ジェスチャーや顔の表情が豊かになったりするときに働いている自律神経系です。
低いトーンの背側迷走神経系は、じっと静かにしながら心が和らいでいる状態です。赤ちゃんに母乳を与えたり、パートナーとハグしたり、静かに瞑想したりするときに働いている自律神経系です。
腹側迷走神経系と低いトーンの背側瞑想神経系にシフトするには、一つは、トラウマに再交渉して未完了の防衛反応のエネルギーを解放したり、修正体験でアタッチメントを安定型にするなどの方法があります。これらはカウンセリングやセラピーで行います。
もう一つは、身体の感覚を落ち着かせることで、安全のフェルトセンスを体験するという方法があります。こちらはさまざまなエクササイズを通して行うことができる自己調整の方法です。
緊張をほぐすエクササイズ
エクササイズは、言葉で説明するのは難しいので簡単に紹介します。
①グラウンディング
椅子や床に支えられていることを意識する方法です。椅子の背もたれを感じ、座面を感じ、足裏を感じます。
②歩行禅
ゆっくりと歩きながら重心がシフトしていくのを感じます。足裏に意識を向けます。
③オリエンテーション
部屋の周りを首を回して見回します。目に映ったものを3つ言葉にします。
④呼吸
鼻から息を少し吸い、口から長く吐くのを繰り返します。
⑤マイクロムーブメント
体の一部をほんの少しだけ動かします。
⑥スロームーブメント
ゆっくりと体を動かします。指をゆっくりとくるくると回します。
⑦瞑想
仙骨、頭の中心、ハートの中心とフォーカスする場所を変化させながら瞑想します。
エクササイズを練習するには
オンラインクラスに参加すると講師の動作を見ながらエクササイズを行うことができます。
人前に出る機会がある方、緊張してしまう方、パフォーマンスを上げたい方、一緒に練習しましょう。