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自己実現とは?桃太郎の心理学的解釈①

見られる自分(マザ・コンと自立の臨床発達心理学)鈴木研二著作を参考に現代的な解釈を試みたものです。

目次

桃太郎の誕生

昔話の桃太郎を心理学的に解釈すると、自己実現の方法が見えてきます。
桃太郎はどのように自己実現をしたのでしょうか。
現代に生きる私たちが学ぶところはあるのでしょうか。

まずは、桃太郎の誕生を見てみましょう。
①「川上から桃が流れてきた」
川の流れ、生命の流れに沿って生まれてきています。桃太郎と同じように川上から流れてくる話には瓜姫があります。瓜姫も自然な流れで生まれてきました。しかし、誕生に人の作為が関わっている昔話もあります。例えば、一寸法師は、子供に恵まれない両親が「指先ほどの子供で良いから欲しい」と神頼みしています。

②「うめえ桃コぁこっちゃぁ来い、にがい桃コぁあっちゃぁ行げ」
自然のままに流れてきた桃を美味しい桃と苦い桃に分けています。そして、良い桃を選び、苦い桃を遠ざけています。すると大きな桃がお婆さんの方に流れてきます。桃太郎はこの大きな桃の中に入っています。どういうことが想像できるかというと、養育者の価値観が反映されています。お婆さんが気に入った桃を選んで、気に入らない桃は捨てています。桃太郎家にとっての良い子とはどのような子供なのか後々分かってきます。

③「桃が自ら割れて可愛い男の子が産まれた」
切られる前に自ら割れて出てくるという自発性があります。桃太郎が持っている自発性は今後どのように展開するのでしょうか。

桃太郎の成長

①「桃太郎にお粥を食べさせたり、魚を食べさせたりして育てた。桃太郎は一杯食べれば食べただけ、二杯食べれば食べただけ大きくなる。おまけにとても賢くて、一つ教えれば十覚える。だんだん力も強くなって、なにもかも優れた男の子になった」

食べ物を与えることは母性的愛情を意味しています。母性的愛情をたっぷり与えてもらった桃太郎は大きく成長しています。
また、教えることは父性的愛情を意味しています。勉強、言葉遣い、マナー、善悪の判断など、社会性を育ててあげています。
桃太郎は、なんでもできる優等生タイプの子供に育っていきました。

桃太郎の脱皮

①「俺ぁ大きくなったので、鬼ヶ島へ鬼退治に行きたいから、日本一の黍団子をこしらえて下され」
何もかも順調に育ってきた桃太郎が突然鬼退治に行きたいと言い出します。桃太郎が桃から飛び出す脱皮の時です。
ここでの桃とは、親や世間が承認する価値観です。何もかも優れた男の子としての姿です。

このまま成長すれば何もかも優れたオトナになっていくと思われた桃太郎は、鬼ヶ島にいくと言います。
鬼ヶ島とはなんでしょう。鬼ヶ島とは、親が知らない世界です。世間の常識の外側にあるものです。

理想的な子離れ・親離れ

①「お前はまだ子供なんだから鬼に勝てやしないだろう」
まず、引き止めます。子供だから勝てないだろうという理由を言っていますが、これは親の価値観から出てほしくないという気持ちの表れです。
お爺さんとお婆さんからすれば「順調にいい子に育ってきたのに、いきなり何を言い出すんだ」という驚きの方が大きかったことでしょう。

②「俺ぁ勝てると言って聞かない」
桃太郎は、生半可な気持ちで言い出したのではなかったようです。お爺さんとお婆さんが説得しても絶対に行くと言います。
自分を曲げたくないんですね。
現代の若者もここで親とぶつかりますよね。鬼ヶ島とは言いませんが、親の価値観に挑戦するようなことを言い出します。
例えば、ミュージシャンになりたい、ダンサーになりたい、ユーチューバーになりたい、ゲーマーになりたい。
多くの親の反応は同じです。否定と説得です。

③「じゃあ気をつけて行って来い。鬼退治してくるのを待ってるぞ」
お爺さんとお婆さんは、本当に人間ができています。

引き止めて、注意を喚起して、最後に送り出す。

なかなかこうは行きません。
親が引き止めて、注意して、否定して・・・夢を諦める人も数多くいます。
親が引き止めて、注意して、否定して・・・親に反発して家から出ていく人も少なからずいます。

子供はいつか親から巣立つものです。子供の自立心が芽生え、親は心配しつつも子供を手放す。
桃太郎で語られているのは、理想的な親離れと子離れです。

母性愛と父性愛の贈り物

①「日本一の黍団子を沢山こしらえて腰に提げさせる」
食べ物というのは、心理学的には母性的愛情を意味しています。
母性愛とは、母親が与える愛情という意味ではありません。
子供の内面を受容する、受け入れる、認めるという愛情です。
桃太郎はたくさんの母性的愛情をもらっています。それは社会で活躍するためのエネルギーになります。

②「新しい鉢巻をさせて新しい袴をはかせて刀をさし」
衣類や装飾品、武器を与えることは、父性的愛情を意味しています。
父性愛も同様に父親が与える愛情ではなく、子供が社会でやっていくために必要な態度や言動を教えるという愛情です。
しつけや教育です。

③「日本一の桃太郎と書いた旗を持たせ」
お爺さんとお婆さんの愛情ですね。お前のことを日本一愛しているよと伝えています。
そして、桃太郎はそのことを知っています。
お爺さんとお婆さんに愛されている自分は大丈夫だ。
何があっても大丈夫だ。
大きな自信を身につけることができています。

桃太郎が手に入れたもの

桃太郎はいきなり鬼ヶ島に行ったわけではありません。
家にいる時からいろいろと準備をしています。

まずは、母性的愛情と父性的愛情をたくさんもらっています。
外で活躍するためのエネルギーがたくさんあり、社会性も身につけており、自信もあります。
そして、養育者からの自立と自由を勝ち取っています。親の敷いたレールではなく自分で選ぶことができる力があります。

このような下準備をすることで、心のエネルギーはたくさん溜まっています。
次に、このエネルギーをどのように使うのかが問われます。

心理的エネルギーの使い道

たくさん溜まった心理的エネルギーをどう使うかはその人次第です。
正解も間違いもありません。

多くの人は世の中でうまくやっていくために心理的エネルギーを使います。
人は家から出ると社会に入ります。
家の代わりに社会に適応することで承認欲求を満たすことができます。
人に認められる、必要とされることを求めます。

良識のあるオトナになる、仕事で評価を得る、金銭を得る、信頼を得る、友人やパートナーを得る、結婚する、車や家を買う、子供を持つ、よい教育を受けさせる、よいところに就職させる、出世する、旅行に行く、美味しいものを食べる、別荘を買うなど。

成功している人はこうするという世間の理想に沿って生きます。そうすることで世間から承認を受け、承認欲求が満たされます。

桃太郎も世間の中で生きていくこともできました。しかし、そうはしなかった。

「鬼退治に行きたい」という願いが桃太郎の中から出てきます。世間で成功するためには鬼退治に行く必要などありません。
世間の中でうまくやっていけばいいからです。しかし桃太郎は世間の外に出ようとします。
成功するかどうかわからない道。未知の世界。

桃太郎は心理的エネルギーをこちらに傾けます。どうしてもそうせざるを得ない。それが「自己実現」の欲求です。

後半へと続く。

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